2026年8月7日
エリック・カールから北斎へ――東京の東側で楽しむ二つの芸術世界

東京都現代美術館「エリック・カール展」

7月の三連休を利用して、東京の東側にある二つの美術館で開催されている特別展を訪れてきました。どちらも期間限定の貴重な展示で、普段なかなか見る機会の少ない内容です。
見逃してしまう方も多いと思いますので、ANA・JAL株主優待券販売をご利用いただいている皆さんにもぜひ訪れていただきたいと思いご紹介します。
最初に向かったのは、『東京都現代美術館』で開催されていた「エリック・カール展 はじまりは、はらぺこあおむし」(開催期間:2026年4月25日~7月26日)。
ちなみに東京都現代美術館の魅力についての記事を前回ご紹介しています。併せてご覧ください。
→東京都現代美術館で出会う「現代アートという冒険」
そして翌日は、墨田区にある『すみだ北斎美術館』で開催されている開館10周年記念特別展「北斎 広重 ふたりの富士、それぞれの富士」(開催期間:2026年6月23日~8月30日)を訪れました。
一方は、世界中の子どもたちに愛される絵本作家エリック・カール。もう一方は、日本を代表する浮世絵師である葛飾北斎と歌川広重。時代も国も表現方法も異なりますが、どちらの作品にも、人々の心を豊かにする芸術の力を感じました。東京東側の地域で、世界的な芸術に触れられる素晴らしさを改めて感じる二日間となりました。
◆三連休の大混雑!東京都現代美術館「エリック・カール展」
三連休ということもあり、東京都現代美術館は大変な賑わいでした。木場駅から都営バスに乗ると、車内はベビーカーを押した家族連れでいっぱいでした。
「この人たちも美術館へ行くのだろうか」と思っていると、予想通り、ほとんどの方が「東京都現代美術館前」のバス停で降りていきました。会場入口には長い列ができており、展覧会の人気ぶりを実感しました。
ただ、混雑はしていましたが、展示がまったく見られないというほどではありませんでした。一枚一枚の原画に近づいてじっくり鑑賞したい場合は、人の流れに合わせてゆっくり進む必要があります。そのため落ち着いて作品を楽しみたい方には、平日や開館直後の時間帯がおすすめです。
◆「はらぺこあおむし」の世界を原画で味わう
今回のエリック・カール展では、『はらぺこあおむし』(1969年)をはじめ、『パパ、お月さまとって!』(1986年)、『10このちいさなおもちゃのあひる』(2005年)など、27冊の絵本の原画が展示されていました。
さらに、グラフィックデザイナー時代の作品、絵本制作の初期段階で作られるダミーブック、コラージュに使用された色や模様をつけた紙など、約180点もの作品が紹介されていました。
エリック・カールの魅力は、鮮やかな色彩だけではありません。薄紙にアクリル絵の具や水彩、クレヨンなどで色や模様を描き、それを細かく切り抜いて貼り合わせる「コラージュ」という技法によって、独特の温かみのある世界が生み出されています。原画を間近で見ると、紙のしわや僅かなゆがみ、色の重なり、筆の跡まで感じ取ることができます。絵本では何度も見てきた作品ですが、実際の原画を見ることで、その一枚一枚に込められた手仕事の細かさに驚かされました。

別の展示室へ向かう渡り廊下のパネル

『パパ、お月さまとって!』のフォトスポット
※3階は原則として写真撮影が禁止されていましたが、別の展示室へ向かう渡り廊下のパネルやフォトスポットでは撮影が認められていました。一方、1階には撮影可能なエリアも設けられていました。~絵本の原画の写真撮影は原則として禁止です~
◆児童書に携わった者として感じた感動
私は以前、児童書の出版社に勤務しておりました。『はらぺこあおむし』を出版している出版社とも共同販売の仕事をしていたため、エリック・カールの作品には、一般の方よりも多く触れる機会があり、何度も目にしてきた作品でした。
しかし、今回初めて原画を目にし、その印象は大きく変わりました。本では伝わりきらない紙の質感、色彩の深み、そして一枚一枚に込められた作者の思い。長年親しんできた作品だからこそ、原画との出会いには特別な感動がありました。
また、日本語訳の素晴らしさにも改めて気づかされました。原文の「But, he was still hungry.」という一文を、日本語版では「やっぱりおなかはぺっこぺこ」と表現しています。単なる翻訳ではなく、子どもが声に出して楽しめる響きやリズムまで考えられた言葉です。絵だけではなく、翻訳者や編集者の力も加わって、世界中で愛される絵本になったのだと感じました。
※「エリック・カール展 はじまりは、はらぺこあおむし」は東京会場終了後、福岡県立美術館(2026年10月23日~12月20日)、大阪・あべのハルカス美術館(2027年3月20日~5月9日)で巡回予定です。

はらぺこあおむしと自画像
すみだ北斎美術館 開館10周年記念特別展

エリック・カール展の余韻を残した翌日、すみだ北斎美術館を訪れました。目的は、開館10周年を記念して開催されている特別展「北斎 広重 ふたりの富士、それぞれの富士」です。会場には、葛飾北斎の「冨嶽三十六景」と歌川広重の富士を描いた作品が並び、二人が描いた富士山を比較しながら楽しむことができました。

比較しながらの鑑賞も楽しい
北斎の富士は、力強く雄大です。荒波の向こうにそびえる富士、人々の暮らしを見守る富士。その姿からは自然の迫力が伝わってきます。一方、広重の富士は、人々の生活や旅の風景の中に自然に溶け込んでいます。同じ富士山を描いていても、北斎は「自然の力」、広重は「人々の暮らしや情緒」を表現しているように感じました。なお、会場内は写真撮影が禁止されていました。写真に残すことはできませんでしたが、その分作品とじっくり向き合う時間になりました。
◆圧倒された「隅田川両岸景色図巻」~こちらも残念ながら写真撮影禁止~
今回、もう一つ印象に残った作品が、葛飾北斎の肉筆画の中で最長とされている「隅田川両岸景色図巻」です。この作品は、100年以上にわたりイギリスに渡り、長く所在が分からなくなっていました。しかし、約10年前に日本へ戻り、現在はすみだ北斎美術館に収蔵されています。
展示されていたのは高精細複製画でしたが、その長さと迫力には圧倒されました。全長約7メートルにも及ぶ本作を実物大で見ることができるだけでなく、映像による解説も視聴でき、作品の魅力をより深く知ることができました。
隅田川両岸の風景が細部まで描かれており、船を操る人、橋を渡る人、川沿いで暮らす人々など、江戸の町の息遣いがそのまま伝わってくるようでした。
※『北斎を学ぶ部屋』には、リアルな「北斎アトリエ」が再現されていました(人形が動いたときには驚きました)

リアルな「北斎アトリエ」

錦絵ができるまで
翌日、実際に隅田川沿いを歩いてみました。時代は大きく変わりましたが、川の流れは今も変わりません。北斎が見つめた景色と、現在の隅田川を重ねながら歩くと、いつもの風景が少し違って見えました。
◆東京の東側で感じた芸術の力
東京東側には、浅草・東京スカイツリー・隅田川をはじめ、歴史と文化を感じられる場所が数多くあります。今回ご紹介した東京都現代美術館とすみだ北斎美術館も、その魅力を代表するスポットの一つです。世界的な絵本作家エリック・カールの原画、そして日本が誇る北斎・広重の浮世絵。時代や表現方法は異なりますが、どちらも心に残る素晴らしい芸術との出会いになるはずです。
おすすめランチは豪華な海鮮丼

訪れたのは、本所吾妻橋駅から徒歩約10分の場所にある「野口鮮魚店」。東京都現代美術館へ向かうバス停がある本所吾妻橋駅から、徒歩で10分ほどの場所にあります。駅前の繁華街や商店街から少し離れた、決して目立つ場所ではありません。
しかし、その評判は確かなもので、いつ訪れても多くのお客さんで賑わっています。店内には地元のお客様だけでなく、外国人観光客の姿も多く見られました。駅から離れた場所にあるにもかかわらず、多くの方が訪れていることに驚かされました。
口コミやSNSなどを通じて評判が広がっているのかもしれません。以前訪れた際には、お昼頃に到着するとすでに行列ができていました。そのため今回は少し時間をずらして訪問しましたが、それでも店内は満席。改めて人気の高さを感じました。
人気の理由は、何といっても豪華な海鮮丼です。新鮮な魚介がたっぷり盛り付けられた海鮮丼を、1,000円台前半から楽しむことができます。価格以上のボリュームと鮮度で、見た目の豪華さにも驚かされます。
観光地の有名店とはまた違い、地元の人に愛されながら、今では外国人にも知られる人気店となっているところも魅力です。東京都現代美術館やすみだ北斎美術館を訪れる際には、少し足を延ばして立ち寄ってみる価値のある、おすすめのランチスポットです。


